ロックなブログ

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宇多田ヒカル 新作アルバム『Fantome』 全曲解説 8曲目『荒野の狼』

 

今日は8曲目の『荒野の狼』です。

本作はミディアム~スローな楽曲群が中心ですがそんなアルバムの中でこの曲は強いビートのアップテンポなダンスナンバー(踊れる曲)です。

強いビートから曲がはじまり、かっこいいベースが後から続きます。このイントロがかっこいい!

スローな曲もこの曲のようにアップテンポな曲も徹底してミニマリズムを貫く姿勢が音から感じられます。

打ちこみやシンセなどで音を重ねていき、曲を成り立たせる現代の手法と真逆でもともと入れていた音もどんどん省いてき、それぞれのパートがもつ音の強さを際立たせているという感じがします。

この曲の感じ(ミニマム)などは後期のマイケルジャクソンを彷彿させます。

“ともだち”にも通じる管楽器(ホーンセクション)の使い方にも統一した流儀を感じます。

宇多田ヒカル <祝・全米itune3位!!>新作アルバム『Fantome』 全曲解説 6曲目『ともだちwith小袋成彬(おぶくろ なりあき)』 - ロックなブログ

曲を盛り上げるためや厚みを持たせるための管楽器ではなく独立して鳴っている、管楽器は管楽器で一つの音楽が成立しているような印象です。

そしてそんなミニマムなアレンジで歌と詩がより際立つ、そんな曲です。

この“荒野の狼”というタイトルはヘルマン・ヘッセの小説からとったと思われますがこの詩とヘッセの小説についてまたこの小説名がそのままバンド名になったバンドについてなどこのタイトルについてはまた別の機会に(番外編)お話させていただきます。

この曲も原曲の素晴らしさをダイレクトに感じる名作です。

宇多田ヒカルというひとの日本人離れしたリズム感の素晴らしさもこの曲でよくわかります。

 

≪以下引用≫ 著作権法の第32条引用を参考に歌詞カードより引用しています。

荒野の狼

惚れた腫れた 騒いで楽しそうなやつら
そうだそうだ お互いを肯定する輩

まずは仲間になんでも相談する男
カッコいいと思ってタバコ吸う女の子

偽物の安心に悪者探し
私たちには関係無い

誰にも消せない痛みを
今宵は私に預けなさい
荒野の狼 吠えても 朝が怖い
言葉にできない想いを
今宵は歌にして聴かせたい
荒野の狼 二匹の月夜舞台

首輪つながれて生きるのはご免だね
愛情と引き換えに名前なんかいらない

少し苦い飲み物で乾杯したら
青い青いシーツの向こう岸へ漕ぎ出そう

誰だって同じ 帰る場所が欲しい
だけど 無いものは無い

涙は見せない主義でも
今宵は私と濡れたらいい
荒野の狼 走れど 明日が怖い
叶うことのない願いを
今宵は誰かと見送りたい
荒野の狼 二匹の影絵芝居

首輪つながれて生きるのはご免だね
満たされぬ心だけ与えられたのは何故?

好きだ それだけで引き留めちゃダメだよね
永遠の始まりに背を向ける 私たち